2024年10月31日

衆院選の結果を「裏金」だけで語るのは誤り――自公過半数割れの要因を整理する


 2024年衆院選は自民党と公明党の連立与党が大きく議席を減らし、過半数を割り込む結果となった。メディアからは派閥の政治資金パーティの収入を裏で議員に還付した「裏金」問題を与党の敗因とする説が聞こえる。短い選挙戦中も「裏金」議員の選挙情勢が注目され、野党各党も「裏金」批判を繰り広げた。

 だが、選挙結果をスキャンダルのみに還元することは民意の矮小化に繋がる。特に、自民党の低落は「裏金」報道以前に始まっていたことは重要である。本稿では、与党の議席減の要因を並べて検討することで、今回の選挙に関する思考と議論の転換を図ってみたい。

自民党支持率低下は「裏金」以前から
 自民党の「裏金」問題が一般に広く報道され問題視されるようになったのは、東京地検特捜部による関係者への任意聴取が報じられた2023年11月中旬からである。

 一方、自民党の支持率はこの時点までに低落していた。図表1は、時事通信の世論調査結果を示している。時事世論調査は、2000人近い回答者数と出来事に左右されない定期性によりノイズの小さい調査結果で知られている。
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 この調査における自民党支持率は、岸田内閣発足後22年3月まで20%台後半で推移していた。同年4月に30%に達したが、以降は下落傾向となり、9月からは20%台前半に定着した。23年半ばからさらに下落し始め、「裏金」報道直前の23年11月に20%を割り込んでいる。「裏金」報道が激しくなった24年1月に15%に達し、9月に総裁選の余波で21.1%となるまで20%台を回復することはなかった。

 このように自民党支持率の動向は「裏金」の影響が見られる一方、同党支持率の低下はそれだけを理由としているわけではないこともわかる。それでは、どのような要因が考えられるだろうか?
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posted by suga at 16:37 | 分析記事

2021年11月01日

2021年衆院選 各社情勢(結果予測)に関する考察

 今回の衆院選では、国会議員白書本体で各社の情勢予測をまとめていました。選挙後の分析のネタ用に付けていたのを公開してみたのですが、各社の情勢を確認していた当初からどう転んでもなかなか大変なことになりそうだとわかり、まとめておいて良かったと思います。

 ここではいくつか簡単な図表を載せ、解説しておきたいと思います。
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タグ:衆院選
posted by suga at 18:42 | 分析記事

2021年09月10日

野党の候補者調整の意義と課題――2019年参院選の分析から


 次の衆院選は、野党の選挙協力、選挙区調整が鍵になります。2017年衆院選は選挙前に民主党が分裂し、希望の党と立憲民主党に分かれたために、野党は多くの小選挙区で選挙前の段階で負けていました。2021年衆院選では、まだ調整を残している段階ですが、17年と同様の分立状態は回避されそうです。

 ただし、野党の協力に疑義を呈する人々もいます。共産党と協力したら逃げる票もあるとか、そのロジックは何でもいいのですが、あまり有効でないと主張する向きもあるようです。

 そこで、2019年参院選のデータを使い、野党協力の効果について簡単に論じておきたいと思います。


■限定的だった野党統一候補の成功
 2019年参院選の1人区では野党間の候補者調整が行われ、すべての選挙区で野党系の候補が1人となりました。その結果、32選挙区中10選挙区で野党系候補が勝利しました。この結果は、一定の成功を収めたとも表現できる一方、10勝22敗のダブルスコアで負けたとも表現できるものです。

図1a 野党比例区得票率と野・与党選挙区候補得票率差(2019年参院選)続きを読む
posted by suga at 15:00 | 分析記事

2020年11月04日

「大阪都構想」への理解度が高い人ほど同構想に反対する・・・という分析結果は怪しいので気を付けましょう


 先日行われた「大阪都構想」をめぐる住民投票を前に、同構想に関する理解度が高いほどこれに反対し、理解度が低いほど賛成に回るといった内容の「調査結果」が公表され、ツイッター等で出回っていたようです。しかし、すでに記事タイトルに示したよう、この分析結果は怪しいものであり、真に受けてはいけません。

 なぜそのように言えるのか、簡単に解説しておきます。続きを読む
タグ:世論調査
posted by suga at 00:43 | 分析記事

2020年08月08日

多重共線性(Multicollinearity)は何が問題なのか――日本の選挙研究の実例から


 今回は多重共線性(Multicollinearity、マルチコ)について実例を元に解説したいと思います。

 マルチコは、よく問題になるなる言われるわりに、実際に問題になっているのを見たことがないという方も多いでしょう。院生同士の研究会でマウントの取り合いに使われるくらいの存在かもしれません。

 たまたまツイッターを見ていたら、神戸大学の藤村直史先生がよい材料を提供してくださっていたので、感謝しつつこれを使います。

Fujimura, N. (2020). Effect of Malapportionment on Voter Turnout: Evidence from Japan's Upper House Elections. Election Law Journal: Rules, Politics, and Policy: Published Online:7 Jul 2020. (pdf)

htmlの別ソース

 選挙がテーマですが、広くデータ分析を行っているみなさん、データ・サイエンティスト等を目指すみなさんに参考となると思います。こういう生の実例が手に入ることは珍しいですし。

 ただ、先に述べておきますが、自分は方法を開発するような立場の人間ではないので、以下の記述に間違いや誤解を生む内容が含まれているかもしれません。わかりやすい言い回しに努めていますので、厳密でない単純な言い方になっているところもあります。あと、うまく言語化できず珍妙な表現になっている場合もあります。

 それでよろしければ、長いですがお読みいただければと思います。続きを読む
タグ:参院選
posted by suga at 06:42 | 分析記事