2021年11月01日

2021年衆院選 各社情勢(結果予測)に関する考察

 今回の衆院選では、国会議員白書本体で各社の情勢予測をまとめていました。選挙後の分析のネタ用に付けていたのを公開してみたのですが、各社の情勢を確認していた当初からどう転んでもなかなか大変なことになりそうだとわかり、まとめておいて良かったと思います。

 ここではいくつか簡単な図表を載せ、解説しておきたいと思います。




■単純星取表
 情勢の一番手が勝利した場合を各社情勢の勝利として集計しました。なお、読売、日経は終盤調査のデータです。
 読売 248勝41敗
 日経 251勝38敗
 毎日 252勝37敗
 時事 247勝42敗
 朝日 248勝41敗
 産経 251勝38敗

 こうしてみると、各社横並びで優劣をつけにくいところがあります。的中率は85%程度で、あまりよいとは言えません。


■予測失敗の偏り
 ただ、ツイッターなどを見ていると、読売・日経グループの予想は当たらず、朝日の予想が当たったという声がよく聞かれます。単純な当たり外れでは上記のように各社に違いはないのに、このような印象の差が生じるのは、党派別の予測に違いがあるためです。



 表は、各社が2番手以下として実際には当選した候補の、党派別の分布を示しています。読売新聞等の情勢では、自民党候補に2番手以下として当選した例が偏っていることがわかります。一方、朝日新聞と(あまりネットでは成功した印象を語られない)毎日新聞は偏りが小さく、少し立憲民主党に辛めの予測だった程度で済んでいることがわかります。


■接戦区の読み違い
 この傾向が端的に表れるのは今回非常に多かった接戦区です。



 表には読売新聞と朝日新聞の、自民と立民に絞り、接戦区(しのぎを削る、デッドヒートなどの表現で差がないことを情勢で表現した選挙区)における情勢1番手候補と2番手候補の、実際の選挙結果での得票率差の平均値を示しています。

 先に朝日新聞を見ると、1番手にした場合と2番手にした場合とで、自民、立民に傾向に大きな差がありません。党派に寄らず、的確に得票率を予測できていたと考えられます。

 一方、読売新聞が1番手とした立民候補の得票率差はマイナスとなっており、落選者が多かったことが伺えます(当選率44.2%)。一方、1番手予測の自民党候補の得票率差は大きくプラスとなっており、接戦としたわりに差を開いて当選した候補が多かったことが伺えます。

 このように、党派ごとに予測の偏りがあったために、読売新聞等の情勢は的中率のわりに与党微減という全体の傾向を予測できなかったと考えられます。一方、朝日新聞は党派ごとの偏りがないために、同程度の的中率でも全体の傾向を見誤らなかったと言えます。


■今後の情勢調査の行方
 ただし、的中率自体は変わらないので、朝日新聞の情勢の精度が他紙に比べて遥かに高いとは言い難い面もあります。集計するとよいところに収まっているのですが、個別にはかなりズレがあったと見られる選挙区も多いです。そのあたりは各社情勢と結果を対照させて確認してみると面白いです。

 今回の結果を受けて、ネット調査の優位を謳うポジショントークも見られるようですが、当たったのはネット調査だからではなく、データから予測する部分が優秀だったからであって、他社が簡単に真似ることはできないように思います。都議選の毎日新聞のネット調査を用いての情勢は大きく外しました。

 また、同程度に当てた毎日新聞の調査は日経・読売陣営と同じオートコール+SMSでした。いまいち評価されないのは、比例の予測を失敗したからでしょうか。自民党の獲得予測63〜64とかなり狭いレンジの数字を出していて、予測を外したいのかなと思いましたし。

 あと、よくある誤解にネット調査は安上がりだというのがありますが、外部に調査を委託し、回答者にポイント等を付与するためには資金が必要です。1選挙区当たり1200を目標にサンプルを集めており、他社の電話調査よりもかなり多いです。おそらく、これくらい集めてようやく今回の精度を達成できるという感じなのだと思います。

 まとめると、接戦区が多く難しい今回の選挙結果を他社よりも偏りを小さく予測できたという点において朝日新聞のネット調査を利用した情勢予測は成功しましたが、今後他社が導入して成功する保証はないでしょう。朝日新聞は入念にテストしたようですから、他社がいきなり始めてみてもうまくいかない可能性はあるでしょう。しばらくは今回のズレを材料に電話調査での予測を修正するという方向のほうが現実的かもしれません。
タグ:衆院選
posted by suga at 18:42 | 分析記事