(7/10、わかりにくいのでタイトル変えました)
引き続き、野党系2候補について簡単にデータを見て議論してみます。前回の記事は下記ですが、連続はしていないのであちらを読まなくてもこちらのお話を理解することはできます。まあ今回は、文章は大したことを言っておらず、図がお役に立てればという感じです。
小池百合子圧勝の簡単なデータ分析(2020年東京都知事選挙)
今回の都知事選では、告示直前に山本太郎候補が出馬を表明したために、革新系の野党系2候補間で票割れが起きることが危惧されました。実際には、2候補合わせてもまったくもって1位に全く届かないという結果となったので、単純に両勢力とも支持不足が敗因なのは明らかですが、それでもデータを観察することで得られる示唆はあります。そういうわけで、地域別得票構造を観察して、そこから何が言えそうか考えていきたいと思います。
図7は今回の革新系野党系の2候補と前回の鳥越候補の自治体別得票率を、比較しやすいように折れ線グラフで示したものです。山本太郎候補は、23区と都下の市部で非常に安定して10%前後の得票率であることが特徴となっています。これに対して宇都宮候補と前回の鳥越候補は、かなり凸凹した得票率となっています。
山本太郎候補に関して言えば、昨年参院選のれいわ新選組の得票率も5%弱で地域格差が少なかったことから、山本太郎/れいわ新選組は地域に寄らず広く薄く支持を集め、集票する政治家/政党だと言えます。このことは、同候補/同党が地域の組織にあまり依存しないで集票していることを示唆します。地域ごとの組織や国会/地方議員などの有力者を頼りに選挙を行った場合、もっと得票にムラが出ます。メディアやネットを介して政策を宣伝し、満遍なく支持者を獲得した結果と推察できます。いわゆる空中戦ですね。
これに対して、宇都宮候補、鳥越候補の凸凹は、国会議員等の組織の強さに応じて得票率にムラができているようです。そして、今回の宇都宮候補は鳥越候補に比べてその凸凹が激しくなっているようにも見えます。
山本候補の得票数と宇都宮候補の得票数を比較し、江戸川区など都区部東部で接近、逆転していることを指して山本候補が貧困層にリーチしている証ではといった議論があるようです。しかし、実際には宇都宮候補が弱い地域でも山本候補は一定して集票していた結果が表れただけのようです。
図8は、宇都宮候補の自治体別得票率に2019年参院選比例区の立憲民主党、共産党の得票率を重ねたものです。これを見ると、れいわ新選組ほどではないですが、共産党の得票率は安定的に見えます。これに対して立憲民主党の得票率は非常に凸凹しており、その凹凸は宇都宮候補の凹凸と似ています。ちなみに相関係数は宇都宮・立民は0.78、宇都宮・共産は0.48でした。
地域ごとに見てみると、2019共産党得票率に比べて宇都宮候補の得票率が顕著に高い地域は千代田区など都心3区、世田谷〜杉並など都区部西部、武蔵野市、三鷹市、小金井市、国分寺市など都下東部です。これらは立憲民主党の議員、しかも小選挙区で勝ち負けするくらいの有力議員がいる地域と重なります。都心3区を除けば、これらの地域で立憲民主党は参院比例区でも高い得票率となっています。
こうしてみると、宇都宮候補の集票は共産党の安定した組織を基礎にしつつ立憲民主党の強い地域で積み上げるという感じであったと言えそうです。とはいえ、参院比例区の立民+共産に比べてだいぶ低い得票率となっています。報道によれば、特に立憲民主党の支持者の歩留まり率(支持者のうち宇都宮候補に投票した割合)は低かったようです。
組織依存の選挙を行っている場合に、地域ごとに組織の強弱にムラがあり、組織が支持者も固めきれないなら、得票数が少なくなっても仕方がないでしょう。強い政治家がいる地域以外でいかに組織を作り支持を伸ばすか、そしてその支持をいかに強固にするかが課題です。これは次出るかわからない宇都宮候補以上に、立憲民主党の課題でしょう。
宇都宮候補は山本候補を上回ったとはいえ3ポイント差で、勝者から見れば微々たる差です。両陣営の支持者の中にはお互い対立を煽るような方々もいるようですが、今回の戦い方自体、お互いに参考になるものでしょう。訴え重視で空中戦で支持を集めることも、組織的な集票活動を行うことも、どちらも何百万という票を集めるには必要なことです。
小池候補圧勝を有権者が「勝ち馬」に乗った結果とする論評もあるようですが、そうだとすれば事前に「勝ち馬」にさせないための戦略と準備が大事だったはずです。有権者に意味のある選択肢を示す意味でも、早めに候補者を決めて組織づくりと政策宣伝、人々との対話に時間をかけることが大切なように思いますが、どうでしょうか。
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この記事に関連して、横軸カテゴリの折れ線グラフの有用性という記事を書きました。こちらもどうぞ。
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