2018年09月27日

第1回授業内課題解説「男性率を規定するのは何?」【SFC「方法論探究」2018】



 長いのでこちらで解説します。次回までの課題に解答する前に読んでおくとよいでしょう。 この問題は次回までの課題のヒントとして提示したもので、時間内に提出すれば多少おかしな答えでも得点を与えることにしました。なので思い付きで答えてももちろん大丈夫ですが、頭を使って解に近づく作業を行えば分析眼を養うことに繋がります。

■図から読み取れること
 この図からは、都道府県の???率が高くなるに従い男性率が低下していること(負の相関関係)、右下に秋田県、左上近くに東京都が来ています。授業中に述べた通りそれぞれの県、都の周辺には似たようなお仲間県が分布しています。ここから、横軸には例えば農村的な度合いを示すものが来ると予想することはできるかもしれません。たとえば農業従事者比率などでしょうか。

 ただし、以上の情報のみを用いて解答することは今回の課題に関しては拙速です。授業中にヒントとして述べた通り、x軸=原因、y軸=結果という意識で散布図は描かれます。当然、複雑な社会現象に取り組む社会科学ではどちらかが結果でどちらかが原因と、常に単純に綺麗に分離して考えられるわけではありませんが、この図は少なくとも因果関係を念頭に書かれています。散布されたマーカーの分布も何らかの強い相関関係を示唆しています。

■解答に近づく経路
 解法としては、x軸をいろいろ考えるよりも前に、男性率がどのような要因で規定されるかを考えるのがひとまず近道でしょう。

 すぐに思い浮かぶのは職業でしょうか。女性が就職しがちな職業を考え、x軸にその割合が来ていると考えてみるのは間違いではありません。ただし、25-30%という結構な割合の数値なので、想像の範囲をかなり広げていかないとこれというのは見つからないかもしれませんね。

 実際には、ある程度の知識を踏まえて解答しなければ正解には近づけないと思います。ヒントとしては、図に示される都道府県別の男性率が概ね50%以下であることが挙げられます。なぜ多くの都道府県で男性率は50%以下になるのでしょうか?それは女性のほうが死亡率が低いため、別の言い方をすれば女性のほうが寿命が長いためです。

 新生児では、若干男性が多いことが知られています。食糧事情の改善、衛生状態の改善、医療の発達などにより、現代では成人になっても同年齢では男性が女性よりも多くなっています。しかし、女性の方が死亡率が低いため、高齢になるほど女性人口と男性人口の差は縮まっていきます。女性人口と男性人口が逆転するのは50歳以上で、70歳では男性は女性の9割、80歳では7割、90歳では3分の1の人口となります。なお、高齢者の性比に関してはかつての食糧事情等々や戦争の影響も関係してきますが、ここでは置いておきます。

■今回の答え
 説明が冗長になりましたが、横軸は「高齢化率」と呼称される65歳以上の人口割合です。高齢化が進んだ地域ほど、男性の割合は低くなるのです。

 解答としては、年齢に関する指標を指摘できれば十二分でしょう。ざっと見たところ、複数回答を含めて1割程度の方が正解しているようです。常識に照らせば、もっと正解してほしかったところですが、まあいいでしょう。あくまで次回までの課題のヒントですから。正解できたかどうかよりも、筋道を立てて考えられたかを自己評価してください。

 この問題と解説からわかるように、社会現象の因果構造を考えるにあたって大切なのは、その現象を中心とした物事に関する知識です。いかに高度な分析手法を知っていても、知識がなければ要因の“あたり”をつけることすら困難なのです。逆に、そうした知識や基本的な考え方が備わっていれば、現象の因果構造を想像していくことは簡単になります。

 このことがわかれば、次回までの課題についてより良い解答を見つけることも楽になるでしょう。ごく常識的な知識や考えを武器に、数字やその解釈のおかしさについて存分に指摘していただければと思います。
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posted by suga at 22:14 | SFC講義「方法論探究」