2017年11月19日

若者が自民党を支持しているって本当?第2回――世論調査では20代の自民党支持率は高くない

 前回の記事では、出口調査結果からは有権者の世論はわからないことを指摘しました。出口調査は投票者のデータしか持っていないので、その値を見て「投票した若者」のうちでの自民党支持率とは言えても、若年層一般に自民党を支持しているとは言い難いわけです。分母を有権者にして(絶対得票率で)考えれば、若い世代ほど自民党に投票しないことになります。言い換えれば、投票に行くほど自民党を支持している人の割合は、若年層ほど低いのです。

 一方、ここで「なぜ若年層で自民党支持率が高いのに選挙ではみんな棄権してしまうのか」という疑問が浮かぶ人がいるのではとも述べました。そこで今回は世論調査のデータを見て、これを考えてみます。

 ただし、前回の記事を丁寧に読んだ人の中には、今回どんなことが指摘されるのか予測できた人もいるでしょう。「要因をあれこれ考える前に、まずその現象が本当に存在しているかどうか考えましょう」と述べましたが、実際にデータを確認してみると、世論調査結果から若年層の自民党支持率が高いと主張することは難しいのです。


■有権者に占める若年層の割合
 ここで、結果を見る点を明確にするために、若年層を定義しておきます。

 拙著『世論の曲解』では20代と30代を若年層とし、40代、50代を中年層、60代、70代以上を高齢層としていました。これは、3層が2グループごとになってわかりやすいからですね。

 一方、人口割合からより若い人々を定義するやり方もあるかもしれません。図2は、2016年10月の推計人口における、18歳以上人口に占める各年齢の人口割合を示しています。つまり、各年齢がどれだけの割合で有権者に含まれているのかを表しています。累積の割合を見ていくと、若い方から足して3分の1に達するのは43歳、50%に達するのは52歳です。51歳以下は有権者の中では若いほうと言ってよいでしょう。



 ただ、今回の件に関する報道、記事、コラム等で世論調査結果が言及される際は、20代あるいは18歳〜29歳の数値に着目しているようなので、この記事でもこれらを主に見ていくこととしましょう。18歳、19歳は計2.3%、20代は計11.4%、両者合わせて13.6%となります。有権者のうちだいたい7人に1人ですね。なお、表現がうるさくなるので、18歳、19歳を含むデータでも基本的に「20代」と表現することとします。


■毎日新聞世論調査の年代別自民党支持率
 さて、報道されている自民党支持率を確認してみましょう。多くの記事で根拠として登場する毎日新聞の記事では次のように書かれていました。

「年代別の自民党支持率も、最初の調査は20代以下が4割弱と最も高く、30〜60代の2割台と好対照。2度目も20代以下は3割程度で、30〜60代は2割台だった。」「あす公示 若年層は保守的? 内閣・自民支持多く 9月世論調査」『毎日新聞』2017年10月9日朝刊

 毎日新聞は9月に2回調査を行っており、この記事ではその数字を紹介しています。両調査とも全体の自民党支持率は29%でした。

 ここで報告されている「最初の調査」の自民党支持率からは、たしかに20代以下の自民党支持率は高いように感じます。おそらく30代から60代に10ポイントくらいの差をつけていそうです。一方、「2度目」はどうでしょうか。「2割台」と「3割程度」が指し示す範囲は重なりますし、「3割程度」は全体の29%とも大差ないかもしれません。

 この記事のように、実際の数字を示さずに曖昧にするのは、おそらく数字を「独り歩き」させないためです。各年代別の数字は、回答者数が少ないために誤差が大きくなります。そのため、安易な比較をしないで欲しいという配慮からこのような表現をすることになります。もっともこの場合、20代以下は大きい方に、それ以外は小さい方に「〇割」の数字を当てているようにも見えます。いずれにしても、具体的な数字を見てみたいところです。


■若年層の自民党支持率は高いとは言えない
 新聞報道では報道されなかったり、曖昧に表現されたりする年代別の政党支持率ですが、一部の世論調査ではこれを具体的な数字で確認することができます。朝日新聞は月刊誌『Journalism』(リンク先はアマゾン)、時事通信は旬刊誌『時事世論調査特報』(公式紹介ページ)、毎日新聞は自社の検索サービス『毎索』(公式紹介ページ)、読売新聞は季刊誌『読売クオータリー』(アマゾン)
において、それぞれ自社世論調査の詳細を報告しています。

 図3は、これら4社の入手可能だった中で最新の世論調査における年代別自民党支持率を示しています。残念ながら、話題となった毎日新聞の9月の調査の数字はまだ公開されていません。なお、各社の調査を比較するなら同時点で揃えた方がよいのですが、ここではさまざまな時点のデータを見たいため、これでよいでしょう。対象者のサンプリング・聴取法も違いがあり、時事通信が層化2段無作為抽出の面接調査、朝日と読売が固定電話番号と携帯電話番号をそれぞれRDD法で抽出し、回答に重みを付けて合算する電話調査、毎日はこの時点では固定電話番号のみをRDD法で抽出する電話調査でした。



 この図から、まず20代と全体の値を比較してみると、全体よりも20代が高かったのが毎日新聞、同じだったのが朝日新聞、低かったのが時事通信と読売新聞というように分かれています。毎日新聞の9月第1回調査のように、全体よりも20代が10ポイント近く上回っている例はありません

 次に、各社の年代別傾向を見てみましょう。時事通信は高齢ほど自民党支持率が高い傾向が最も明確で、朝日新聞は高齢ほど自民党支持率が高そうだが20代で反転しているように見え、読売新聞は高齢ほど自民党支持率が高いけれども50代が低い方に、もしくは30代40代が高い方に外れているように見え、毎日新聞は年代ごとの明確な傾向がみられない中で、20代が70代以上と並び最も自民党支持率が高い、という感じでしょうか。

 この図に示された傾向からは、20代の自民党支持率が他の年代に比較して特に高いとは言えません。逆に、20代の自民党支持率が他の年代に比較して特に低いとも言えないでしょう。

 それでは、毎日新聞の9月第1回世論調査で、20代以下の自民党支持率が高かったのはなぜでしょうか? 世論調査で他と傾向が異なる数字が出た場合、(1)たまたま高かった、(2)ちょうど高くなるタイミングだった、(3)調査の特性が出た、という3つの理由が考えられます


■数字がバラつく若年層の世論調査結果
 もっとも、この3つの理由は図3の4つの政党支持率にも当然に生じえます。たまたま、4つの20代政党支持率が本来の値よりも低く出ていた可能性を考慮してもよいでしょう。そこで、もう少しデータを確認しておきましょう。

 図4は、毎日新聞世論調査の自民党支持率を全体と20代に分けて示したものです。リサーチ関係の仕事をしている人の中には、思わずわーとかぎゃーと呟いてしまった方もいらっしゃるかもしれません。わー



 図4の20代の激しく上下動する折れ線には、いわゆる誤差が出ています。これは先の理由(1)にあたります。図3に示された20代の値は右端の数字にあたりますが、むしろ平均的な結果であったようにも見えます。全期間を通してみても、20代の数字は全体の値の周りに誤差のように散らばっているように感じます。

 毎日新聞世論調査の詳細データには、各年代の対象者数も誤差も記されていませんので、図4の20代の上下動の大部分が誤差によるものかどうかはわかりません。ただし、ある程度の予想はできます。

 RDD法により最終的に得られた回答者の年代別人数や割合を公開している調査は少ないです。朝日新聞の世論調査は、かつては生の回答者数の段階での年代別の割合を公開していましたが、読み物のページ数を増やしたためなのか、現在は細かい情報を載せなくなりました。

 現在参考となるのはNHK世論調査のデータです。『放送研究と調査』2017年4月号に掲載されている詳細を見ると、NHK世論調査で最後の固定電話調査であった2017年3月の調査では、20代の割合は2.8%、わずか27人でした。

 毎日新聞の世論調査はNHKよりも回答者数が多いことをまず踏まえ、さらにNHKより頑張って調査していたと仮定して、仮に20代が40人含まれていたとしましょう。RDD法では重み付け集計で誤差が加わりますがこれは無視することとします。この条件で、自民党支持率が30%だった場合、一般的な95%の信頼度の誤差は±14.2ポイントとなります。言い換えると、仮に20代の自民党支持率が全体と変わらなかったとしても、全体の値の上下30ポイントくらいの幅でふらふらと数字が出てきてもそれほど不思議ではないわけです。


■毎日新聞世論調査結果報道の不思議
 一方、2017年9月第1回の調査は、毎日新聞初の携帯電話を含めた調査でしたから、固定電話限定調査での推測は適用できません。ここでもNHKを参考にして誤差を仮に計算してみましょう。

 2017年4月のNHK世論調査で20代回答者は全体の6.9%、85人となっていました。今度は毎日新聞のほうが回答者数はやや少ないのですが、毎日新聞のほうには18歳、19歳が含まれていることと、やはりがんばって20代の回収率を上げたと仮定したうえで、100人くらい回答者が集まったとします。そして仮に20代の自民党支持率が全体と同じ29%だったとしましょう。その誤差は±8.9%と計算されますから、38%くらいの値が出てもおかしくはないことになります。

 実際の20代以下回答者数はわかりませんから、手元の計算で誤差ではないと判断した可能性もあります。ただ、報道の仕方としてはかなり拙速だったようにも思います。この回の調査は、毎日新聞の世論調査にとって初の携帯電話を含めた調査でしたから、数字の傾向がどうなるかはこの時点ではあまりわかっていなかったはずです。それに第2回の結果からは第1回よりも詰まっています。結果が誤差かどうかだけでなく、タイミングや調査の特性の影響も考慮して、あまり大きくニュースとして報じないという選択が賢明だったように思います

 毎日新聞の最近の記事を読むと、なおさらそのように思えてきます。同紙は衆院選後の11月13日に次のような記事を掲載していました。

「自民勝たせた若者の意識 「青春=反権力」幻想に」『毎日新聞』2017年11月13日夕刊 

 この記事の冒頭では「先月の衆院選では、10代、20代の自民党支持が他の世代に比べて突出して高かった」と述べたうえで、共同通信の出口調査結果を紹介しています。ここで不思議なのは、10月の記事では用いていた自社の世論調査結果をなぜ使わないのかという点です。

 実はこの記事が掲載された同日の朝刊で、同紙の11月の世論調査が発表されていました。これは全くの邪推ですが、先の記事はこの11月世論調査結果に合わせて作られたものの、世論調査からは20代以下が自民党を支持しているような明確な傾向が出てこなかったため、共同通信のデータを用いたのかもしれません。あくまで邪推なので、そういうことがあるのかを含め、新聞記者のみなさんの意見も聞きたいところですね。


■今回のまとめと次回予告
 長くなりましたので今回はここで切ります。今回の話をまとめると、各社世論調査の年代別自民党支持率の傾向からは、20代の支持率が特に高いとは言えないと結論付けられます

 次回は、他のデータも見てみようと思います。まだ自民党支持と棄権の関係についても論じていませんし。
posted by suga at 00:31 | 分析記事