2021年09月10日

野党の候補者調整の意義と課題――2019年参院選の分析から


 次の衆院選は、野党の選挙協力、選挙区調整が鍵になります。2017年衆院選は選挙前に民主党が分裂し、希望の党と立憲民主党に分かれたために、野党は多くの小選挙区で選挙前の段階で負けていました。2021年衆院選では、まだ調整を残している段階ですが、17年と同様の分立状態は回避されそうです。

 ただし、野党の協力に疑義を呈する人々もいます。共産党と協力したら逃げる票もあるとか、そのロジックは何でもいいのですが、あまり有効でないと主張する向きもあるようです。

 そこで、2019年参院選のデータを使い、野党協力の効果について簡単に論じておきたいと思います。


■限定的だった野党統一候補の成功
 2019年参院選の1人区では野党間の候補者調整が行われ、すべての選挙区で野党系の候補が1人となりました。その結果、32選挙区中10選挙区で野党系候補が勝利しました。この結果は、一定の成功を収めたとも表現できる一方、10勝22敗のダブルスコアで負けたとも表現できるものです。

図1a 野党比例区得票率と野・与党選挙区候補得票率差(2019年参院選)続きを読む
posted by suga at 15:00 | 分析記事

2020年11月13日

菅原琢「政権に関与してこそ護憲派」『朝日新聞』2014年7月31日朝刊


 集団的自衛権に関しては、朝日新聞をはじめ各紙とも有識者の意見を並べ、読者に参考材料を提供してきた。賛成、反対問わず、その主張の仕方は多様で、そういう論理もあるのかと感心することも多い。

 今の日本国憲法は、数ある法律に比べると平易な言葉で書かれているが、その分、その意味は明確でないことがある。むしろ、これは解釈の余地を設けているものである。集団的自衛権に関しても、さまざまな立場の法律家が、この解釈の幅をめぐり論陣を張っていた。

 ただし、法律家の主張や議論は、実際に適用される解釈とは異なることがあると法学部では教わる。憲法の教科書を読めば、多くの学者間で正しい解釈だとされる通説とは別に、裁判所が示す判例の説が存在し、両者がしばしば異なり、対立するということを知る。主に最高裁が示した法律の解釈が、司法や政治・行政の場で意味を持つのである。続きを読む
posted by suga at 10:44 | 懐かしい文章

2020年11月04日

「大阪都構想」への理解度が高い人ほど同構想に反対する・・・という分析結果は怪しいので気を付けましょう


 先日行われた「大阪都構想」をめぐる住民投票を前に、同構想に関する理解度が高いほどこれに反対し、理解度が低いほど賛成に回るといった内容の「調査結果」が公表され、ツイッター等で出回っていたようです。しかし、すでに記事タイトルに示したよう、この分析結果は怪しいものであり、真に受けてはいけません。

 なぜそのように言えるのか、簡単に解説しておきます。続きを読む
タグ:世論調査
posted by suga at 00:43 | 分析記事

2020年10月15日

菅原琢「「保守化」の昭和史――政治状況の責任を負わされる有権者」小熊英二・樋口直人編『日本は「右傾化」したのか』慶應義塾大学出版会、2020年、pp.73-118。


 共著で1章担当した本、小熊英二・樋口直人編『日本は「右傾化」したのか』(慶應義塾大学出版会、2020年)が出版されました。寄稿した論文の内容を紹介します。



「保守化」の昭和史――政治状況の責任を負わされる有権者

 ―構成―
1 「保守化」言説を探る意義

2 「青年の保守化」論争と六〇年代の世論調査
2-1 社会党の党内抗争と青年問題
2-2 「保守化」=社会党支持率の低下
2-3 広がる「青年の保守化」論
2-4 「青年の保守化」論の退潮
2-5 不定期世論調査が強調した「青年の保守化」


3 「保守回帰」と七〇年代後半の選挙結果
3-1 新聞で流行した「保守回帰」
3-2 地方選の「保守回帰」の実際
3-3 自民党が低迷した七九年衆院選の謎
3-4 支持率低迷期に“善戦”した自民党
3-5 「保守回帰」は人々の保守化を意味するか


4 浮動的有権者像と八〇年代の選挙結果波動
4-1 生活保守主義の登場
4-2 新中間大衆論による選挙結果の説明
4-3 実証を欠く浮動的有権者像
4-4 選挙結果波動のメカニズム
4-5 温存された八〇年代の日本人保守化論


5 繰り返された日本人保守化論の背景

菅原琢「「保守化」の昭和史――政治状況の責任を負わされる有権者」小熊英二・樋口直人編『日本は「右傾化」したのか』慶應義塾大学出版会、2020年、pp.73-118。

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posted by suga at 21:00 | お知らせ

2020年08月08日

多重共線性(Multicollinearity)は何が問題なのか――日本の選挙研究の実例から


 今回は多重共線性(Multicollinearity、マルチコ)について実例を元に解説したいと思います。

 マルチコは、よく問題になるなる言われるわりに、実際に問題になっているのを見たことがないという方も多いでしょう。院生同士の研究会でマウントの取り合いに使われるくらいの存在かもしれません。

 たまたまツイッターを見ていたら、神戸大学の藤村直史先生がよい材料を提供してくださっていたので、感謝しつつこれを使います。

Fujimura, N. (2020). Effect of Malapportionment on Voter Turnout: Evidence from Japan's Upper House Elections. Election Law Journal: Rules, Politics, and Policy: Published Online:7 Jul 2020. (pdf)

htmlの別ソース

 選挙がテーマですが、広くデータ分析を行っているみなさん、データ・サイエンティスト等を目指すみなさんに参考となると思います。こういう生の実例が手に入ることは珍しいですし。

 ただ、先に述べておきますが、自分は方法を開発するような立場の人間ではないので、以下の記述に間違いや誤解を生む内容が含まれているかもしれません。わかりやすい言い回しに努めていますので、厳密でない単純な言い方になっているところもあります。あと、うまく言語化できず珍妙な表現になっている場合もあります。

 それでよろしければ、長いですがお読みいただければと思います。続きを読む
タグ:参院選
posted by suga at 06:42 | 分析記事